ハチナナハチハチ

サンジューがきみにやってくる。世代(87、88)きっかけウェブマガジン。あたりまえを、おもしろおかしく

最近読んだ本で、本当にためになった本があるので自分の要点整理を兼ねてご紹介したいと思います。


この本はご存知「初音ミク」について書かれた本ですが、「初音ミク」という名前と青緑のツインテールの少女は認知していても、「それがなんなのか」はあまり認知されていないように見受けられます。
「初音ミク」は「音声合成ソフト」です。つまりソフトウェア。曲がりなりにもソフト業界経験者の私は、パッケージソフトとしての「初音ミク」や後続の「鏡音リン・レン」「巡音ルカ」は知っていましたが、一般にキャラクター認知の方が大きく、その本質は意外と知られていません。
著者、柴那典氏は初音ミク登場時の時代背景や、ヒットの要因初音ミクが変えたことをインタビューを交えてわかりやすく紹介しています。 
VOCALOID2 キャラクターボーカルシリーズ01 初音ミク HATSUNE MIKU
クリプトン・フューチャー・メディア
2007-08-31

これが最初のソフト版。

初音ミク登場時の時代背景(サード・サマー・オブ・ラブ)
著者は初音ミク登場の時代を「三度目のサマー・オブ・ラブ」としています。

サマー・オブ・ラブとは、60年代末のアメリカで起きたムーブメントのこと。「ウッドストック」というフェスティバルが開催され、ベトナム反戦運動、公民権運動、ヒッピーカルチャー、ドラッグ文化などが混ざり合い、音楽とドラッグ(当時は合法)で平和な新しい世界の幕開けと思われた一連のムーブメントです。その20年後。80年代後半のイギリスでテクノやハウス、クラブに集って一晩中踊るようなカルチャーが生まれ、「サマー・オブ・ラブの再来」と呼ばれました。どちらも若者が新しい音楽と遊び場(=カルチャー)を生んだムーブメントとしています。

さらに20年後。つまり20年サイクルで三度目のサマー・オブ・ラブが、初音ミク登場の時代。2000年代末(我々ハチナナ・ハチハチ世代はまさにど真ん中ですが)CDが売れなくなったころ。原因はインターネットの発達だと言われました。コピー配布ができないようにした「CCCD(コピーコントロールCD)」が出た。あれはめんどくさかった思い出しかないよね!「インターネットが音楽を殺す」と言われた時代でしたね。

ヒットの要因
さてそんな時代に生まれた初音ミクがここまでヒットした要因は。
2003年にYAMAHAが開発した音声合成技術「VOCALOID」を用いてクリプトン・フューチャー・メディアが発売したのが「MEIKO」。より洗練された「VOCALOID2」で2007年に世に出たのが「初音ミク」。2005年にTwitter、2006年にニコニコ動画、MyspaceとYouTube、2007年にUstream、Pixiv、2008年にSoundCloudといった音楽、映像、画像を配信できるサービスが一斉にスタート。奇跡のタイミングでした(後述)。初音ミクははじめはネタやカバー曲だったのが「ボカロP」と呼ばれる作曲家らが作った曲を歌いはじめます。

初音ミク発表直後から出だした最初期のオリジナル曲として有名な曲の一つ。

「みくみくにしてあげる♪【してやんよ】」
ニコニコ動画の弾幕付きで見ると、テンポや歌詞とニコ動の親和性の高さを感じる。

すると、それらを見たユーザーによってイラストが描かれ、動画がつけられ、「歌ってみた」「踊ってみた」といった形での創作が始まり、各種サービスでシェアされ瞬く間に広がっていったのです。つまりこのようなクリエイターの表現の場とツールが揃いだしたタイミングに初音ミクが生まれたことが「奇跡」なのです。2008年にはカラオケでもボカロ曲が歌える上に権利料はちゃんとボカロPに流れる仕組みもでき、年間ランキングにsupercell名義で初のボカロ曲「メルト」がランクイン、実在しない初音ミクというキャラによるZEPP TOKYOでのライブも開催されました。


「メルト」

「初音ミク」のキャラ設定はシンプルで、身長158cm、体重42kg、年齢16歳、得意なテンポ:70〜150BPM、得意な音域:A3〜E5、あと数枚のイラストだけだったそうです。そのシンプルな設定が、クリエーターたちの創造意欲をかき立て、様々な世界観の楽曲が生まれたのです。

初音ミクが変えたこと
(ざっくりいうと)「非営利であればお互いシェアして良い」旨のガイドラインをクリプトン社が設定したことで創造の連鎖ができ、売るためでなく、初音ミクを使って自宅で「楽しむ」ために音楽を作っていた人たちによって自然発生的に生まれた創造の連鎖。曲を作る人、映像を作る人、絵を描く人、演奏する人、歌う人、踊る人、コスプレする人が営利とは離れたところで刺激され、いわゆる「N次創作」のモデルとなりました。supercellをはじめ、はじめはコミケなど同人活動だったボカロ曲がヒット、一躍音楽家として活動を始めるボカロPも多くいます。プロが作った音楽を選んで消費するモデルから、ボカロを足がかりにプロになる人が生まれ、それぞれの特技を活かしてコンテンツを無限大に増幅していく流れが産まれました。かのヒャダインこと前山田健一氏もニコニコ動画でのヒットから売れっ子作曲家となった一人です。


そして、2011年に公開されたGoogle ChromeのCM。
初期の頃から活動しているボカロP、kz氏が「Hail to the Internet」というメッセージとともに投稿したこの曲「Tell Your World」。クリプトン社のサイトで「初音ミク」を購入した人が曲を作り、インターネットを介して世界中に広がり、様々な創作を経てロス公演までの流れがCMになっています。まさに「Everyone, Creater」

そして、今や初音ミクはオペラにも進出。独特のハイトーンヴォイスと人間には歌えない「完全なる音程」の生み出す独特の緊迫感を持ってフランス、オペラの聖地「シャトレ座」公演を実現し、目の肥えたオペラフリークをして「新しい芸術の形」として評価されました。昨年のSUMMER SONIC前夜祭、SONIC MANIAでもライブしてました。
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服の意匠はYAMAHAのシンセ「DX-7」をモチーフにしてるらしい

「インターネットが音楽を殺す」と言われていたはずなのに、むしろそこから新しい遊び場が生まれ、営利目的ではなく単純に「(曲を書くのが、絵を描くのが)好き」という気持ちから発生するあたらしい流れが誕生した、という意味で著者の「三度目のサマー・オブ・ラブ」というのがしっくりきます。

「ボカロ」そのもののブーム(ニコ動などの再生件数)は一段落した感じがありますが、「ムーブメント」として初音ミクが生んだカルチャーは、第一次、第二次サマー・オブ・ラブ同様に音楽の歴史を変える出来事として消える事はないと思います。

かくいう私自身もボカロ曲に詳しくはなかったですが、ここに貼付けた曲などは一度は耳にした事がありました。「長崎は今日も雨だった」で有名な作曲家、彩木正雄氏は80歳を超えて、初音ミクで作った曲を「まさP」名義でニコ動に投稿しているそう。初音ミクを媒介にあらゆる世代、あらゆるジャンルのクリエイターが創造活動をする勢いは止まっていないようです。本書には電子音楽の父、冨田勲氏が初音ミクを使って行った公演や、ボカロPとして一躍ヒットメーカーになったクリエイターたちの現在、電子音楽の成り立ち等も語られていて非常に参考になります。

初音ミクは実在しませんが、まるで実在するかのように一人称で歌う曲や、ボカロ作曲からクリエイターとして羽ばたいていったボカロPとの思い出を歌う曲など、まるで生きている一人のシンガーのような感じがします。一方で人間には歌えない高速息継ぎなしの歌唱や、まったく音程の揺れがない独特の声(声優は藤田咲さん)という無機質な部分もあり、「ボカロだから成り立つ」曲が多いかなと思います。


「千本桜」
個人的に好きな曲。映像含めクオリティがすごい。

21世紀の新しい音楽の形として、「ボカロって何?」という人、是非一度聴いてみてください。もちろんCDを買わなくても、クリックするだけで聴けますからね!

名称未設定
レーシングチームもあるよ。

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